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横浜地方裁判所 平成10年(ワ)1858号 判決

原告

被告

金城秀雄

主文

一  被告は、原告に対し、一七〇九万三〇四〇円及び内金一五一六万七〇三四円に対する平成一〇年五月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文と同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 発生日時 平成五年五月六日午前一時二五分頃

(二) 発生場所 沖縄県宜野湾市字志真志一八九番地丸国アパート先路上(以下「本件事故現場」という。)

(三) 加害車両 訴外喜島久乃(以下「久乃」という。)が運転し、被告が所有する小型四輪乗用自動車(標識番号 沖縄五八と三二二二)(以下「加害車両」という。)

(四) 事故態様 久乃は、加害車両を運転し、本件事故現場を我如古方面から琉大北口方面に向け右折する際、折から対向車線を直進してきた訴外渡慶次賀孝(以下「被害者」という。)運転の自動二輪車(以下「被害車両」という。)に加害車両前部を衝突させ路上に転倒せしめた。

(五) 結果 本件事故により、被害者は、脳損傷、頭蓋骨骨折の傷害を負い、死亡した。

2  責任

本件事故は、久乃が惹起したものであるが、被告は、加害車両を所有・管理し、自己のため運行の用に供していた者であるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条による運行供用者として、本件事故により生じた被害者の損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 死亡に至るまでの傷害による損害

(1) 治療費 三万四一三〇円

平成五年五月六日の宜野湾記念病院治療費

(2) 文書料 五六〇〇円

宜野湾記念病院から交付を受けた診断書一通二〇〇〇円、診療報酬明細書一通一五〇〇円、死亡診断書一通五〇〇円、交通事故証明書一通六〇〇円及び損害てん補に要する印鑑証明書等一〇〇〇円

(3) 損害のてん補 二万三八九一円

次式により算出した国民健康保険からの給付金。

(合計点数)(一点単価)(国保負担率)

3413点×10円×0.7=2万3891円

(4) したがって、被害者の死亡に至るまでの傷害による損害額は、前記(1)及び(2)の各金額を合計した総損害額三万九七三〇円から(3)の金額を差し引いた一万五八三九円であるが、被害者の過失割合を六割としてこれを斟酌すると、総損害額の六割に相当する過失相殺額二万三八三八円が右損害額を上回るため、死亡に至るまでの傷害による損害のてん補の余地はない。

(二) 死亡による損害

(1) 葬儀費 五五万円

(2) 逸失利益 二九一五万五〇八四円

被害者の過去三月分の給与支給総額を九〇日で除した六五四三円に三六五日を乗じて算出した年収額二三八万八一九五円から、生活費として五〇パーセントを控除した額に、被害者の死亡時の年齢(一八歳)に対応する新ホフマン係数二四・四一六を乗じて、次式により算定した額。

238万8195×(1-0.5)×24.416=2915万5084円

(3) 慰藉料 九五〇万円

被害者本人分三五〇万円及び遺族二名分六〇〇万円

(4) 損害のてん補 五一万五〇〇〇円

葬儀費について、国民健康保険から一万五〇〇〇円、賠償責任者から五〇万円が支払われた。

(5) したがって、被害者の死亡による損害額は、前記(1)ないし(3)の各金額を合計した総損害額三九二〇万五〇八四円から(4)の金額を差し引いた三八六九万八四円であるが、被害者の過失割合を六割としてこれを斟酌すると、総損害額の六割に相当する過失相殺額二三五二万三〇五〇円を右損害額から差し引いた一五一六万七〇三四円が死亡による損害である。

4  被害者の権利の承継

前記損害のうち、被害者の被告に対する損害賠償請求権は、被害者の相続人である渡慶次賀久及び渡慶次初子(以下「相続人ら」という。)が承継した。

5  損害のてん補及び代位

(一) 被告は、加害車両につき、自賠法に基づく責任保険の被保険者及び責任共済の被共済者以外の者であったため、原告(所管庁 運輸省自動車交通局)は、自賠法七二条一項に基づく相続人らの請求により、同人らに対し、平成六年一二月一二日、政府の補償事業の業務委託者である訴外大同火災海上保険株式会社を通じ、前記損害てん補金として一五一六万七〇三四円を支払った。

原告は、右保険株式会社に対し平成七年一月三一日右損害てん補金一五一六万七〇三四円を支払った。

(二) 右支払の結果、原告は、自賠法七六条一項に基づき、右てん補金を限度として、相続人らが被告に対して有する損害賠償請求権を取得した。

6  不真正連帯債務者の一部弁済

(一) 被告と久乃は、本件事故による損害賠償債務につき、不真正連帯債務を負担する。

(二) 原告は、久乃との間で、平成七年八月一四日、沖縄簡易裁判所で即決和解が成立し、久乃は、原告に対し、平成一〇年五月一二日までに合計六六万円を弁済した。

(三) 原告は、これを右和解条項に従い元本に対する年五パーセントの割合の遅延損害金四〇万五一四六円に充当し、その余を延納利息に充当した。

(四) その結果、右充当金は不真正連帯債務者による一部弁済として、弁済者久乃本人の債務消滅部分と対応する被告の負担する債務のうち、別紙計算書のとおり、遅延損害金の一部に充当され、右支払済みの金額の内五五万八八九四円を限度として被告の遅延損害金の一部は消滅した。

7  よって、原告は、被告に対し、損害賠償金一五一六万七〇三四円及び損害てん補日の翌日である平成七年二月一日から平成一〇年五月一二日までの年五分の割合による遅延損害金二四八万四九〇〇円の内久乃から支払済みである五五万八八九四円を控除した一九二万六〇〇六円との合計一七〇九万三〇四〇円及び内金一五一六万七〇三四円に対する損害てん補日の翌日である平成一〇年五月一三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1のうち、(一)ないし(三)の各事実は認め、(四)の事実は不知、(五)の事実は認める。

2  同2のうち、本件事故は久乃が惹起し、被告が加害車両を所有・管理していたことは認め、その余は否認する。

加害車両は、当時、車検を受けておらず、被告名義ではない。また、本件事故は、久乃が、被告の留守中に無断でエンジンキーを持ち出し加害車両を運転中に惹起したものである。したがって、被告は、本件事故について加害車両の運行供用者には当たらない。

3  同3ないし6は不知。

三  抗弁(消滅時効)

1  被告の原告に対する損害賠償債務は、本件事故発生日の翌日である平成五年五月七日から起算して三年を経過した。

2  被告は、原告に対し、平成一〇年九月四日の本件口頭弁論期日において、右消滅時効を援用する旨の意思表示をした。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は認める。

五  再抗弁(時効中断)

原告は、被告に対し、平成七年一月三一日、会計法三二条に基づく納入通知書を送達し、さらに、平成九年一二月一七日、民法一五三条に基づく催告書を配達証明郵便で送達し、右催告から六か月以内の平成一〇年六月八日、本件訴訟を提起したことにより、損害賠償債務の消滅時効は中断された。

六  再抗弁に対する認否

再抗弁は争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これらの各記載を引用する。

理由

一  事故の発生

1  請求原因1(一)ないし(三)、(五)の事実は当事者間に争いがない。

2  甲第二、第三号証、第五号証によれば、本件事故の態様について以下のとおり認められる。

(一)  本件事故現場は、我如古方面から普天間方面に至る歩車道の区別のある片側二車線(車道幅員片側約七メートル)道路である国道三三〇号線と琉大北口方面に至る歩車道の区別のない幅員五・三メートルの道路との交差点上であり、現場周辺の位置、状況は別紙交通事故現場見取図(以下、見取図という。)記載のとおりであるが、右交差点には我如古方面側に歩行者用の押しボタン式信号機のみが設置されていた。国道三三〇号線の最高速度は毎時四〇キロメートルと指定されていた。

(二)  久乃は、本件事故当時国道三三〇号線上を我如古方面から普天間方面に向けて時速約四〇キロメートルで加害車両を運転し、見取図〈1〉の位置で本件交差点を琉大北口方面へ右折するため方向指示器を出し、同図〈2〉位置で前方二〇五・五メートルの対向車線上である同図〈ア〉の位置に自動二輪車のライトの灯を認めたが、右ライトの位置はかなり遠方に見えたので自車が先に右折を完了できるものと思い、ギアーを二段に落として減速し、見取図〈3〉の位置で琉大北口方面の道路の方を見て対向車線に注意を向けないまま、同図〈4〉の位置で時速約二〇キロメートルに減速してハンドルを右に切って右折を開始した。

(三)  久乃は、加害車両がセンターラインに掛かったところで対向車線に目をやると、見取図〈イ〉の位置に被害車両の自動二輪車が来ていることとその速度が非常に早いことに気付いて驚いて急ブレーキをかけたが、間に合わず、同図〈×〉の位置で加害車両の前部と被害車両が衝突していた。

(四)  被害車両は、本件事故当時国道三三〇号線上を普天間方面から我如古方面に向けて走行していたが、事故直前の速度は時速約一〇五・七キロメートルと推測される。

二  責任

1  本件事故は久乃が惹起し、被告が加害車両を所有・管理していたことは当事者間に争いがない。

2  被告は、加害車両は当時車検を受けておらず、被告名義ではなく、本件事故は久乃が被告の留守中に無断でエンジンキーを持ち出し加害車両を運転中に惹起したものであるから、被告は本件事故について加害車両の運行供用者には当たらないと主張するので、この点に検討する。

甲第四、第五号証及び被告本人尋問の結果によれば、次の各事実が認められる。

(一) 被告は、平成五年二月ころ、加害車両を購入し、当時住んでいた沖縄県宜野湾市字上原一四二番地の一所在のコーポ八大の駐車場に置いていたが、まだ運転免許を持っていなかったため運転はせず、時々エンジンをかけてバッテリー切れを防いでいた。加害車両は平成四年一一月二六日から車検が切れており、被告は加害車両を購入後に車検を受けることはしなかった。

(二) 被告と久乃は、平成三、四年ころから知り合い、その後、恋人として交際を続けていた。久乃は、被告から被告宅の鍵を預かるなどして被告宅に出入りし、週に一回程度は被告宅に泊まっていた。久乃は、運転免許を持っていたが、自動車は保有していなかった。被告は、加害車両のキーを、自宅のテレビの上に置いて保管していた。

(三) 久乃は、被告に依頼されて、琉球大学付属病院に入院していた被告の母を被告に代わって看病等していた。そして、久乃は、本件事故の当日、被告から預かった部屋の鍵を使用して被告の部屋に入って加害車両の鍵を持ち出した上、被告の姉から頼まれ、加害車両を運転して被告の母の見舞いに同人を病院へ送迎した帰りに本件事故を起こした。

右認定事実によれば、被告は加害車両を自宅の駐車場に保管しその鍵を自宅のテレビの上に置いていたのであって、恋人として交際し被告宅に自由に出入りしていた久乃が右自動車の鍵を使用して加害車両を運転することが容易に可能となる状態を作出していたのであるから、久乃において被告の明示の承諾を得ることなく加害車両を運転したとしても、被告は社会通念上客観的外形的には加害車両の運行を支配し、制御をなし得る地位にあったと評価できるし、本件事故時に久乃が被告に看病を依頼されていた被告の母の見舞客の送迎のために加害車両を運転していたことからすると、被告にその運行の利益が帰属していたことも明らかである。

したがって、被告は本件事故について自賠法三条の運行供用者に当たり、同条所定の運行供用者責任を免れないというべきであって、被告の前記主張は失当である。

三  損害

1  死亡に至るまでの傷害による損害について

甲第九、第一〇号証によれば、被害者には本件事故による死亡に至るまでの傷害による損害として、治療費三万四一三〇円(平成五年五月六日の宜野湾記念病院治療費)、文書料五六〇〇円(宜野湾記念病院から交付を受けた診断書一通二〇〇〇円、診療報酬明細書一通一五〇〇円、死亡診断書一通五〇〇円、交通事故証明書一通六〇〇円及び損害てん補に要する印鑑証明書等一〇〇〇円)の合計三万九七三〇円の損害が生じたことが認められる。

前記一の事実によれば、本件事故の発生については被害者にも過失があり、その過失割合は六割を超えるものではないと認めるのが相当であるところ、右六割の過失割合分を控除すると、被害者の損害は一万五八九二円となる。

右損害額一万五八九二円から右認定の治療費三万四一三〇円についての国民健康保険の負担率七割に相当する二万三八九一円の被害者が受けるべき国民健康保険からの給付額を控除すると、被害者の死亡に至るまでの傷害による損害については自賠法七二条により政府がすべき損害のてん補の余地はないこととなる。

2  被害者の死亡による損害について

甲第九号証、第一二ないし第一四号証、第一九号証によれば、被害者には本件事故により死亡による損害として、〈1〉葬儀費五五万円、〈2〉逸失利益二九一五万五〇八四円(被害者の過去三月分の給与支給総額を九〇日で除した六五四三円に三六五日を乗じて算出した年収額二三八万八一九五円から、生活費として五〇パーセントを控除した額に、被害者の死亡時の年齢(一八歳)に対応する就労可能年数四九年の新ホフマン係数二四・四一六を乗じた金額)、〈3〉慰藉料九五〇万円(被害者本人分三五〇万円及び遺族二名分六〇〇万円)の以上合計三九二〇万五〇八四円を下らない損害が発生したことが認められる。

前記1のとおり本件事故の発生についての被害者の過失割合は六割を超えるものではないと認めるのが相当であるから、右被害者の死亡による損害額から右六割の過失割合分を控除すると被害者の損害は一五六八万二〇三四円となる。

甲第一五ないし第一八号証によれば、葬儀費について国民健康保険から一万五〇〇〇円、賠償責任者から五〇万円が支払われたことが認められるので、これを右損害額から控除すると、被害者の死亡による損害額は一五一六万七〇三四円となる。

3  以上によれば、本件事故による被害者の損害額は少なくとも一五一六万七〇三四円であることが認められる。

四  被害者の権利の承継

甲第一九号証によれば、被害者の被告に対する前記三認定の損害賠償請求権は、被害者の死亡により相続人らが承継したことが認められる。

五  損害てん補及び代位

甲第一九、第二〇号証、第二五号証によれば、被告は加害車両につき自賠法に基づく責任保険の被保険者及び責任共済の被共済者以外の者であったため、原告は自賠法七二条一項に基づく相続人らの請求により、同人らに対し平成六年一二月一二日業務委託者である訴外大同火災海上保険株式会社を通じ前記損害てん補金一五一六万七〇三四円を支払ったこと、原告は右保険株式会社に対し平成七年一月三一日右損害てん補金一五一六万七〇三四円を支払ったことが認められる。

右事実によれば、原告は、自賠法七六条一項に基づき右てん補金を限度として相続人らが被告に対して有する損害賠償請求権を取得したものということができる。

六  不真正連帯債務者の一部弁済

1  前記一の事実によれば、本件事故について、久乃は本件事故について民法七〇九条に基づき不法行為責任があるというべきところ、久乃は被害者及び相続人に対し被告とともに不真正連帯債務を負う。

2  甲第二四号証によれば、原告と被告との間で、「(一)久乃が原告に対し、元本一五一六万七〇三四円、平成七年二月一日から和解成立日である同年八月一四日まで年五パーセントの延滞金四〇万五一四六円、和解成立日の翌日から完済までの年八・二五パーセントの延納利息の支払債務を負担していることを確認し、(二)久乃が原告に対し右金員を分割して支払うこと」等を内容とする旨の和解が成立したことが認められ、久乃から原告に対し平成一〇年五月一二日までに合計六六万円の弁済がなされ、原告がこれを和解条項に従い元本に対する年五パーセントの割合の遅延損害金四〇万五一四六円に充当し、その余を延納利息に充当したことは原告の自認するところである。

3  そうすると、右充当金は不真正連帯債務者による一部弁済として、弁済者久乃本人の債務消滅部分と対応する被告の負担する債務のうち、別紙計算書のとおり、遅延損害金の一部に充当されたこととなるから、右支払済みの金額の内五五万八八九四円を限度として被告の遅延損害金の一部は消滅したこととなる。

七  抗弁(時効消滅)について

本件債務は本件事故発生日の翌日である平成五年五月七日から起算して三年を経過したこと、被告が原告に対し平成一〇年九月三日の本件口頭弁論期日において右時効を援用する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。

八  再抗弁(時効中断)について

甲第二一ないし第二三号証によれば、原告から被告に対し平成七年一月三一日到達の書面により自賠法七六条一項の規定に基づく損害賠償債権(元本一五一六万七〇三四円)について会計法三二条に基づく納入告知がされたこと、さらに、原告から被告に対し平成九年一二月一七日到達の書面により右債権について民法一五三条に基づく催告がされたことが認められ、平成一〇年六月八日本件訴訟が提起されたことは当裁判所に顕著である。

右事実によれば、原告の被告に対する前記五認定の債権は消滅時効の完成前に時効が中断されているので、原告の再抗弁の主張は理由がある。

そうすると、被告は、原告に対し、損害賠償金一五一六万七〇三四円及び損害てん補日の翌日である平成七年二月一日から平成一〇年五月一二日までの年五分の割合による遅延損害金二四八万四九〇〇円の内久乃から支払済みの前記五五万八八九四円を控除した一九二万六〇〇六円との合計一七〇九万三〇四〇円及び内金一五一六万七〇三四円に対する損害てん補日の翌日である平成一〇年五月一三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるというべきである。

九  結論

以上によれば、原告の本訴請求は、理由があるからこれを容認し、訴訟費用の負担について民訴法六一条を、仮執行の宣言について同法二五九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 三木勇次)

別紙計算書

『久乃の一部弁済が,被告の債務に及ぼす効果について』

〈1〉 久乃の一部弁済額 ………660,000円

〈2〉 久乃の債務の遅延損害金 ………405,146円

てん補日の翌日から和解成立日までの遅延損害金

(H7.2.1) (H7.8.14)

15,167,034×0.05×195/365≒405,146.798629

〈3〉 久乃の債務の延納利息に充当された額(〈1〉-〈2〉)

660,000-405,146= ………254,854円

〈4〉 久乃の延納利息に充当された金額は,延納利息の何日(N)分に当たるか。

15,167,034×0.0825×N/365=254,354

N=74.3412244411 ………74.34日

〈5〉 久乃の74日分の延納利息の金額 ………253,684円

15,167,034×0.0825×74/365=253,684,226218

〈6〉 久乃の75日目の延納利息に充当された額(〈3〉-〈5〉)

254,854-253,684 ………1,170円

〈7〉 英雄の74日分の遅延損害金 ………153,748円

15,167,034×0.05×74/365≒153,748.01589

以上により,久乃の一部弁済(660,000円)により,弁済金は久乃の遅延損害金(405,146円・H7.2.1~H7.8.14)と平成7年8月15日から74日間の延納利息(253,634円)に充当される結果,秀雄については,秀雄の遅延損害金(久乃と同額=405,146円)と久乃の延納利息と同期間(74日間)中に生じた遅延損害金(153,748円)について弁済の効果を受けることとなる。

次に,久乃が一部弁済した金額のうち,残った75日目の延納利息の一部(0.34日分=1,170円)が,秀雄の遅延損害金に及ぼす弁済の効果について

〈8〉 久乃の一日分の延納利息 ………3,428.16円

15,167,034×0.0825×1/365≒3,428.16521917

〈9〉 秀雄の一日分の遅延損害金 ………2,077.67円

15,167,034×0.05×1/365≒2,077.67589041

〈10〉 〈8〉-〈9〉の差

3,428.16-2077.67= ………1,350.49円

久乃の75日目の1日分の延納利息である3,428.16円と秀雄の1日分の遅延損害金2,077.67円との差額1,350.49円は,久乃の延納利息の利率年8.25%と秀雄の遅延損害金の利率年5%の差である年3.25%の部分に当たる。

この差額(1,350.49円・年3.25%)は、久乃と国間の即決和解によって支払われる久乃特有のものであるから,秀雄の債務には弁済の効果は及ばない。

つまり,久乃の支払額は,3.25%と5%の債権発生の古い順で,1日ごとに3.25%に優先充当されることとなり,この差額(1,350.49円)の範囲を超えた金額が,秀雄の債務の1日分の遅延損害金(2,077.67円)の一部として弁済の効果が及ぶことになる。

したがって,〈6〉の金額1,170円のうち,〈10〉の1,350.49円を超えた部分が,秀雄の債務の75日目の遅延損害金の一部として弁済の効果が及ぶことになる。

〈11〉 結論

〈6〉-〈10〉(1,170円-1,350.49)=▲180.49円となることから,久乃の一部弁済(660,000円)によって,秀雄の債務に弁済の効果及び債務を免れる金額は,405,146+153,748(〈2〉+〈7〉)=558,894円となる。

交通事故現場見取図

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